ガムシロップは、カクテルにおける「甘味の調整」「口当たりの滑らかさを付与する」ための重要な材料です。
ただし、レシピによって正しい使い方・使ってはいけない場面があります。
本稿では、誤解されやすいポイントを修正しながら、専門的かつ実用的な視点で体系的に解説します。
目次
ガムシロップとは?その本質と日本での誤解
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本来の定義(Gomme Syrup) | 砂糖+水+アラビアガム樹脂。粘度ととろみがあり、サワー系カクテルの口当たりをなめらかに仕上げる。 |
| 日本での市販「ガムシロップ」 | 多くは果糖ブドウ糖液糖または砂糖水で、アラビアガム不使用。厳密には“Gomme Syrup”とは別物。 |
| 長所 | ・砂糖より溶けやすい・アルコール・酸とも馴染む・口当たりが柔らかくなる |
| 用途が光る場面 | 酸味の強いサワー系、ショートカクテル、卵白入りカクテルなど |
ガムシロップが“正しく使われる”カクテル
基本的に使用して良い代表作
| カクテル名 | 理由 |
|---|---|
| ダイキリ(Daiquiri) | ラム・ライム・砂糖のシンプルな構成。甘味の均一さ・口当たりが重要。 |
| ジン・サワー/ウイスキーサワー | レモンとスピリッツの酸味/アルコール感を滑らかに整える役割。卵白入りの場合は泡の安定にも寄与。 |
| トムコリンズ(Tom Collins) | サワー+ソーダの構成。ガムシロップが甘味と香りのバランスを支える。 |
| アイリッシュコーヒー | 砂糖より溶けやすく、液体全体に甘さが均一に広がるため現場で好まれる。 |
ガムシロップを“使いすぎてはいけない”カクテル
| カクテル名 | 理由・正しい理解 |
|---|---|
| サイドカー | 本来は「ブランデー+コアントロー(オレンジリキュール)+レモン」。甘さの源はコアントローであり、ガムシロップへの完全置換は風味崩壊。入れる場合はあくまで“微量調整”のみ。 |
| ミモザ/ファジーネーブル | ジュースやリキュールに十分な糖分があるため基本無糖。味が薄い場合のみ1〜3mlの補正にとどめる。 |
| カフェ・ロワイヤル | 砂糖キューブをブランデーで燃やす儀式性が魅力。ガムシロップ使用は古典から外れる。 |
正しいレシピ(精度の高い比率・調整方法)
ダイキリ(おすすめ基準レシピ)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| ホワイトラム | 60ml |
| ライムジュース | 30ml |
| ガムシロップ(2:1シロップ) | 12〜15ml(酸味に応じて8〜18mlで調整) |
作り方
- 材料と氷をシェーカーに入れる
- しっかりシェイク(10〜15秒)
- グラスへ注ぎ、必要ならファインストレイン
ウイスキーサワー(卵白入り)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| バーボンまたはウイスキー | 45ml |
| レモンジュース | 20ml |
| ガムシロップ | 12〜15ml |
| 卵白(またはアクアファバ) | 10〜15ml |
作り方のポイント
- ①氷なしで“ドライシェイク” → ②氷を加えて再度シェイク
- 卵白はパスチャライズ食品を使用し安全性確保
プロ仕様・保存可能な自家製ガムシロップ
| 材料 | 分量(例) |
|---|---|
| 砂糖 | 400g |
| 水 | 200ml |
| アラビアガムパウダー | 12〜20g(総量の3〜5%) |
| アルコール(任意) | 10〜20ml(保存性向上) |
作り方の重要ポイント
- アラビアガムは直接高温に入れない → 40〜50℃の湯で事前水和する
- リッチシロップ(砂糖+水)を作り、粗熱が取れたところに少しずつガム液を混ぜる
- 殺菌済みボトルに保存、冷蔵2〜4週間が安全な目安
まとめ
- ガムシロップは「万能な甘味料」ではなく、正しい文脈で使えばカクテルをワンランク上げる素材。
- サワー系・ショートカクテルでは必須級、リキュール主体のカクテルでは慎重に。
- レシピは甘味・酸味・アルコールのバランスで微調整するのがプロの手法。
以上、ガムシロップを使ったカクテルについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
